「あたりまえ」、「地域」、「職場参加」、「権限」をめぐって 〈共に働く街を創るつどい2015〉報告Ⅲ
共に働く街を創るつどい2015報告、いよいよディスカッションへ!
コーディネーターの朝日さんが、各々が他のパネリストの報告を聞いてどう思ったか、率直な感想をお願いしたいと述べた。
吉田さんの「幹也くんのお弁当」について、4人から感想が出された。
渋沢さんからは、話は面白かったが、お金をもらってから温めるのは、それはそれで感じ悪いかなと思うと。
朝日さんからも、障害の有無に関わらず、お金を払って食べるのは当たり前で、今日たまたまお金が無かったらそれはそれで食べてもらって、明日お金を持って来て下さいという社会がいいなと思ったと。
芹沢さんからは、助っ人隊のコーディネーターの女性がスーパーに行ったら、おばあちゃんが買ったお弁当がみつからないから一緒に探してと頼まれ、一緒にグルグル回って、スーパーの電子レンジの中に置き忘れてあるのをみつけた、その女性が地域でたこ焼き屋をずっとやっていたのでおばあちゃんが顔を覚えていた、顔と顔がつながっていることの大切さを感じたというエピソードが語られた。
坂本さんも、地域の中の人と人のつながりを大切にしていかなくてはいけないと思うと述べた。
また、渋沢さんの報告にあった深夜帯の電話相談について、渋沢さんも含めて4人から話された。
吉田さんからは、同じようなことがあり、初めのうちはひんぱんに電話があるが、日中も含めたやりとりの家庭でだんだん落ち着いて来るという経過はよくわかると。また、通所者の中に、家に帰った後夜どこかへ行ってしまう人がいて、それは6畳一間に兄と母と3人でいるという住環境があり、本人からの何かの発信なんだろうと受け止めているとの話も。
阿久津さんからは、長生ひなたのような24時間体制があれば、障害者・高齢者問わずどんなに心強いか、行政を非難するわけではないが、この地域にもそういうところがあればという感想。
渋沢さんからは、阿久津さんの感想も受け、24時間の仕事をするようになってからわかったことだが、行政の人は夜も休日も何かあったら対応してくれること、警察沙汰になることも悪いことばかりではなく地域の生活安全課はほんとうによくわかっているとの補足があった。
朝日さんからは、渋沢さんの指摘に関連して、工夫すれば対応できるものがいろいろあるので、それをどう仕組みにしてゆくかが課題かもとコメント。
つぎに朝日さんから、各々が「地域」のイメージをどんな範囲、どんな意味で使っているかお聞きしたいと投げかけた。
阿久津さんは、入所施設は地域とは言えないこと、地域とは家族・隣近所、買物や床屋はじめいろいろな人と関りを持っていけるところと述べた。
坂本さんは、障害者や高齢者などさまざまな人々が一緒に暮していければそれが地域だと思うと。
芹沢さんは、物理的な距離感、精神的な距離感、両方が必要で、ワーカーズは人と地域に必要なことを仕事として起こすという発想を持っており、生活空間・生活を一緒にできる仲間がいる範囲というイメージだと言う。
渋沢さんは、1万人規模の茂原市では年間に生まれる子供が100人で、保健師が誰も彼も知っているという意味でいいのだが、自治体としてもつかどうかわからないので、中核センターの圏域である長生郡15万人ならばショッピングセンターも一緒で、困ったとき風のうわさが耳に入って来るので、具体的な地域というイメージだと語る。
吉田さんは、日中活動の場の周りも地域ではあるが、本来の地域は各々が住んでいる所だと考えているということ、その居住地域へのアピールはそこに住むご近所に声をかけたり販売活動を一緒にやるというのが理想だと。
それらを踏まえて、朝日さんから、これが地域ですよとホンワカしたイメージを押し付けるのはちょっと違う、生活実感を共有できるところが出発点という感想が出された。
つづいて、朝日さんが、当会が進めてきた「職場参加」という活動について、コンパクトな説明を行った。
職場参加は、障害によって職場から排除されるのでなく、そこにいるべき存在として職場にいる状況をきりひらいてゆくこと。それを実現するために、もちろん雇用されて就職したい人には、かって受託していた就労支援センターがあったし、雇用率には達しない超短時間就労を通して働く手がかりを得てゆくことも大事なこととして追求してきたこと、さらに、仕事発見ミッションと称し、障害者が働くというイメージがなかった店などに、障害者が直接訪ねて行って仕事を見せてもらい、風穴を開けてゆくという活動もしてきたこと。そうした複合的な取り組みを通して成果を上げてきたが、半面ではそれがまだまだ障害者に限られ、他の就労困難者とのつながりの面では限界があったこともたしかであること。
以上の説明の後、パネリストからの「職場参加」についてのコメントを求めた。
阿久津さんからは、会場に来ている世一緒の障害者スタッフがペアになって高齢者のデイサービスを飛び込み訪問した結果、そこの施設長から世一緒に電話があり、障害者も働いた方がいいと言われ、大きな風呂を洗う実習をさせてもらい、障害者就労にもつながった、それからあちこちの高齢者施設にアウトリーチで行くことによってとても小さなヘルパー事業所でも障害者が働ける職場があることがわかった、支援員もやはり外に出ていかなければいけないと語られた。
吉田さんからは、地域活動支援センターで近所の塾、工務店、議員等のチラシのポスティング等を請負い、他団体と一緒にやることで、障害者・職員も含めて互いに交流や情報交換ができたり、商店会からは福引のポスター作成の依頼があるなど障害分野だけでなく異業種の人々とのつながりをひろげる上で、仕事が生きている事が報告された。
芹沢さんからは、「職場参加」とはいままでの枠組みをわれわれがどうほぐすかということではないか、見沼の畑には学童の子ども達だけでなく、川口の事業所が行っている生活困窮者の相談支援を利用している病気や内部障害の人達も一緒に畑に行っており、畑に行っている間は元気になる、いま畑の指導をしているMさんから大根やねぎの販売をしてお金にしないかという提案を受け話し合っているが、「半就労・半x」みたいな形でできることを組み合わせて探っていく、そういうことが出来る関係が協同関係ではないかと語られた。
渋沢さんからは、一般就労は就業・生活支援センターと数年前から一緒に考えている、自立相談や若者、定時制の生徒など障害がないかボーダーの人にとって働く上で何が必要か、それは個別に違う、一般企業で障害者が集まって働く場に関して内容的には批判的な所があるがけっこういい給料が得られ、それがモチベーションになる人もいる、また商工会の人と障害者の仕事について話すとこちらも大変だと言われる、なんでもいいから参加させてというのではなく、お互いにマッチングしてゆくように丁寧にやっていかないとと語られた。
坂本さんからは、ともすれば支援者側の理屈に基づいて支援してしまう傾向があるが、就労支援センターの職員に聞いたたところ、本人の意思を尊重した伴走型の支援をしてゆくんだと言っていたと述べられた。
朝日さんは、職場参加という概念につながる活動としては中学生のスリーデイズ・チャレンジがあると説明した上で、それが障害があったら参加できないとか制度ごとに分けてゆくのでなく、障害者でも高齢者でも外国人でも誰もがということが大事であること、そして一人一人に沿ってということが大事であるとまとめた。
最後に、朝日さんから、では具体的に何をすべきかを話し合いたいと提起された。
会場から2人が発言。
春日部の大坂さんからは、渋沢さんの特別報告にあった、権限をもっていないから関係性でという関わり方に共感を抱いたので、詳しく聞きたいと述べられた。
就労支援センター前所長の沖山さんから、それに関連して、権限があるところが厄介な仕事をしていて業務が進まないという感想をもっているかとの問いかけ。
渋沢さんからは、4月から生活困窮の自立相談の事業をやっているが、これは市がやっている住宅扶助・家賃助成の仕組みや社協がやっている貸付について、自立相談センターのプランが必要で、その意味で権限があるためその目的で来る人が多く、逆にそれらを利用する目的以外だとうちの対象者ではないということになりやすい、それと比べると中核センターは権限がないからこそその人にどうやって受け入れてもらうかという手順を踏まざるを得ないところが横並びで心地よかったりすると語られた。
芹沢さんからは、すけっと隊には地域包括支援センターからオーバープランでもう介護保険が使えないのでお願いしたいと依頼があることが多いが、そういうケースに限って虐待場面に遭遇することも少なくない、すけっと隊のように権限がないからこそ見えることがあると語られた。
朝日さんはここで2人のコメンテーターからの発言を求めた。
榊 勝彦さん(越谷市福祉推進課調整幹)は、あらためて地域福祉は街づくりという認識をした、本来私たちは地域が作る風土や文化に支えられながら自我を形成しやすらぎを得ている、その中で私たちのところでは高齢者支援ということで、サービスを提供する側も受ける側も生活実感を共有する空間で行うシステムを有償で計画しており、これはさまざまな人たちの就労機会の確保にもつながる、そうした仕組みを一日も早く作って行かなければと述べた。
角屋 亮さん(越谷市障害福祉課副課長)は、国の施策で障害者雇用、特例子会社、優先調達法、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所などが進められてきたが、それらにはまらない人、一般就労をめざしつつなかなか一般就労につながらない人はどうするか、とりわけ越谷市では就労支援センターでハローワークと連携した一般就労支援と地域適応支援(職場体験)の事業を展開しているが、一般就労と職場体験の中間を持ち合わせていない、超短時間就労といった働き方や有償ボランティアで働く体験などのしかけをみなさんと一緒に市の事業として展開できないか、ずっと悶々としているが、今日の集会に出てあらためてその気持ちを強くしたと語った。
以上を受けてパネリストから一言ずつ。
阿久津さんは、制度だけではこぼれる、点と点だけではなく面にしなくてはと。
吉田さんは、些細な出来事でも自分たちで抱え込むのではなく、発信してゆくことでつながりを作って行けるんだと感じたと。
坂本さんは、あらためて社協職員として人と人のつながりを大事にして行くことを感じたし、これからも地域の人達の力が大事になるのでボランティアセンター等の活用をと。
芹沢さんは、ぽけっとでは、昔ながらに七輪を囲みながらお茶でも飲もうといった形で地域のつながりをと話していると。
渋沢さんは、中核センターが出来た時、社協の事業が削られた時でもあり、なんだおまえらという感じで見られた、事業が出来たからといって地域が変るわけではなく、良質な活動を続けてゆくことが大事、また福祉だけでやってゆくのは難しい、地域の主流の層の人達はマイナーな活動に親和していけない、違う存在と認識した上で、まずはつながってゆく、そういうイメージで仕事をしていると語った。
最後に朝日さんから、今日は素晴らしいパネリストの方々に囲まれて時間を過ごせた、地域包括支援だということ、でも100%そろえてゆくことは難しい、まずできることから、そしてその人らしい生活の実現に向けてとまとめ、ディスカッションを終えた。
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