我が人生を振り返りつつ 2021.9.22 すいごごカフェ 藤井哲也さん(神奈川精神医療人権センター(KP))

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精神障害者に立ちはだかる社会の壁を崩すために

 現在、NPO法人さざなみ会が運営する「シャロームの家」という神奈川県横浜市の精神保健福祉の就労継続B型のピアスタッフとして働いている。私も精神の当事者で統合失調症。今62歳だけど、15歳くらいから45年来病気を抱えてきた。今まで9回入退院を繰り返し、病状がひどい時は警察が介入して手錠をかけられたこともある。退院する時には必ず訪問看護やヘルパー、生活保護を関係者から勧められたけど全部断り、ぶっつけ本番で厳しい社会で生きてきた。でも、病状が安定し退院した時に、社会にどれだけ受け入れる体制が出来ているか?出来ていないから二次障害としての再発がある。その現状から、医療から福祉にどうやって切り替えていくかを考えて、私達ピアがその一助を担うため2020年に立ち上げたのが、「神奈川精神医療人権センター」。

 「神奈川精神医療人権センター」の主な活動は、月~金曜の電話相談。愚痴をこぼしたいという話も受けるし、入院中に手紙を出せないとか、食事や衛生面の待遇が悪いとか、そういう不自由を感じている方の相談に応じていて、時には弁護士につなげたりする。実際に病院に赴いたりパンフレットを置こうとしているが、どこの病院側も訪問面会などを受け入れてくれるわけではないので、意外とハードルが高い。ただ現状は結構変わってきていて、私は今神奈川県立精神医療センターという大きな病院の医療観察病棟に面会に入ってる。実際に医療観察病棟に民間の団体が入った例はほとんどない。また、退院後も受け入れ先がない方のために単身アパートやグループホームの活用を支援するし、親亡き後を悩む人のために後見制度も請け負っている。ここ1年間で相談窓口にかかってきた電話は100件を超えている。こういうのを通して当事者と社会の壁を崩したいと思っている。
 
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地域活動支援センターは「生きる場所」

 私の所属しているNPO法人さざなみ会は6つの事業所を運営していて、4つの就労継続支援B型事業所と、地域活動支援センター 工房タッチ、指定特定相談支援事業所 さざなみ計画相談センターがある。うちは外仕事の草刈りとか厳しいのが多いので時給も高め。できない方は事務仕事などをやってもらう。分配は公平にして、17時になったら「お疲れ様!」と言う、そういう事業所。仕事の後は勉強会をして、それが終わるとだいたい飲み会。遊ぶために稼ぐ、というのが目標。飲み会でどんちゃん騒ぎをする、それが私達の真のリカバリーの姿。

 私は利用者として長く「工房タッチ」にいたんだけど、地域活動支援センターというのは作業する所じゃなくて居場所。当事者の皆さんがいかにゆっくり過ごせるか、そういうシステムが大事。今、社会は障害者にどんどん働け!働け!って言うかもしれないけど、それが果たして良いかというと、私達は病気を抱えていて、幻覚や妄想があって苦しんでいて、薬を飲めば副作用で日中も眠いって状態があって、大変な人も多いんですよ。極端だけど、この場所に寝る所があれば寝ればいいし、飯がまずいぞとか職員にばっさり言えたり、それが本来あるべき人権なんだと私は思ってる。働く以上に皆さんが「生きる場所」として使えた時に、福祉の成功例があるんじゃないかと思う。もちろん、働くというのも社会参加として進めるべきだけど。

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誰のための”合理的配慮”?

 今どんどん社会が障害者雇用をやってるけど、私からすると法によって反対に締め付けになっているかと思う。「合理的配慮」によって仕事をさせてくれないってのもある。全部が悪いと言ってるのではないけど。

 私は自動車部品の下請けの会社で働いた時、初めのうちは一般雇用で入っていたんだけど、そのうちに「障害者雇用にするから手帳を提出してほしい」と言われ、翌日からは「残業せずに5時に帰っていい」と言われてしまった。会社からすれば「合理的配慮」だけど、そうやって出来ることを出来なくされた。障害者雇用であれば「合理的配慮」で通院で休むこともできる。でも、その時誰か他の従業員がやらなきゃならない。つまりは、障害者雇用の合理的配慮がために全体の仕事配分のバランスをどうやって埋めていくかということ。

 私達がやっていることに対して、お前たちみたいのがいるから世の中よくならないんだよって言われたり、そういう偏見がまだあるけど、私達ピアがピア文化を作ることによって社会を変えて行くことができるんじゃないかと思っている。

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