どう向き合う?やまゆり園事件 2021.10.6 すいごごカフェ 澤則雄さん(映画製作者)【前編】
「鎮魂のモニュメント」に込められたそれぞれの思いとは
澤:津久井やまゆり園で19人の尊い命が亡くなった事件が今年で5年経つ。そこに入所者が戻ってきた。新園長などが決まり再建された中で追悼式が行われた。ある意味画期的で象徴的。どうかこれを皆さんで見ていただいて、知事、新理事達が何を言いたいのか考えてもらいたい。
~DVD鑑賞(澤さんがニュースを編集されました)~
平成28年7月26日、相模原市にある県立の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、19人が殺害された事件から5年となるのを前に、現場に再建された施設で遺族などおよそ40人が参列して追悼式が行われた。また、県が施設の広場に設置した「鎮魂のモニュメント」には、犠牲者のうち7人の名前が刻まれた。この事件で、警察は遺族の意向として犠牲者を匿名で発表し、裁判でも母親が公表を決めた「美帆さん」以外は匿名のまま審理が行われまたが、今回のモニュメントには美帆さんを含む7人の名前が刻まれた。県は、今後、遺族の希望があれば、新たに名前を加えることにしている。
黒岩知事「事件後ずっと名前を出せなかったが、今日お披露目されたモニュメントに7名の名前が刻まれたことはとても感慨深い。当事者目線の新しい障害福祉に全力で取り組むと、19人の御霊に誓った。忘れてはならないのは、元従業員が犯行を起こしたこと。ずっと追及していかなければならない。過去を直視し、支援の在り方、県の在り方、全部抉り出す形でやってきた。悪意があったわけではないと思うが虐待と言われても仕方ない支援もあったのは間違いなかった。安心・安全のための、利用者のための福祉ではなくて障害当事者の目線に立った福祉に切り替えることがとても大切だ。車椅子に縛り付けておく、部屋に閉じ込めておく、これは変えなければいけない。地域移行を前提にしている。終の住処ではないということ。」
記者「元職員が事件を起こしたことに園はどのように責任を取るのかお聞きしたい。被害を受けた方の中には園の加害性を感じている方もいると思う。」
新理事長「事件の後法人の中では検証委員会を立ち上げて、さまざまな角度から検証してきた。結論という形にはなっていないけれども、内部では努力をしてきたことは申し上げたい。社会福祉法人かながわ共同会(津久井やまゆり園を指定管理者として運営)としてはまだまだできていないが、法人としては植松死刑囚が職場というか仕事の中でこういう思想を作り上げてきた、という考え方には至っていない。彼本来のパーソナリティ障害から来るものだと私は理解している。」
今までの実態を踏まえ、今後のやり方を変えられるのか
澤:支援の在り方がそもそもどうだったのかと問うているのに、知事は「調査の結果、虐待と言われてもしょうがないことがあったのは事実」と言った上で、「職員の支援の質を上げる」とすり替えている。身体拘束等の問題は大きな施設全体が持っているテーマ。障害者の身の安全のために身体拘束をするんだ、というのが施設側の言い訳だった。改革を進めているところもあるけど大半がまだ旧態依然の運営。要するに、障害者は管理されるものであって、その人達をいかに安全に生かしておくかということが施設の責任なんだと。それは飼育では?ということになりませんか?僕も3年間くらい現場に入ってるだけなので大きなことは言えないんだけど。
すごく問題なのは、理事長が「植松が園の中(のことが原因)で犯行を及ぼすことになったとは思わない」と言ったこと。それは絶対言ってはいけないことだと思った。裁判の判決文では、「被告人自身の本件施設での勤務経験を基礎とし、関心を持った世界情勢に関する話題を踏まえて生じたものとして動機の形成過程は明確であって病的な飛躍はなく、了解可能なものである」としている。“勤務経験を基礎とし、”と、判決で明確に言っている。であれば、真摯に受け止めなければいけないのに、新理事長は「そういう立場にいません」と言っていて、非常に違和感を感じた。
後編へ続く↓
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