どう向き合う?やまゆり園事件 2021.10.6 すいごごカフェ 澤則雄さん(映画製作者)【後編】

前編はこちら↓
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質疑応答
障害者を管理せざるをえない現場があるということ

大坂:植松が立派な文章や絵を描いているから、世間にいる人達は植松の感覚に対してはある意味批判的じゃなくて、植松さんの考えそのものは正しいよねってところがあるんだろうなと。
澤:黒岩知事「障害当事者の目線に立った福祉に切り替えることがとても大切だ。利用者の安全のために、車椅子に縛り付けておく、部屋に閉じ込めておく、これは変えなければいけない。地域移行を前提にしている。終の住処ではないということ。」と言ったけど、結局終の棲家。地域移行とかGHに出てくとか、一つの施設の中できめ細かいことが行われているものだと思ってたけどそうじゃない。向精神薬を飲ませて意識もうろうとさせれば多動他害もないから暴力的なことも行われないから、それでいいねってこと。
吉原(広):終の棲家にはしないと言ったけど、じゃあ職員が楽になるようにヘルパーを施設に入れる制度はあるのか。そこまで追い込まれているんだってところが行政側がわかってくれないと困るんじゃないかなって。
 わらじに入る前に2年半くらい子供の収容施設に職員として勤めたことがある。散歩してる時に地域の人達と話をしてたりすると、施設長は「情報がもれちゃダメだから無駄な話はするな。」と言っていた。それに、多動の子達は疲れさせないと親が夜までもたないというので、ちっちゃいからだに本を入れたのをしょわせて何キロも走らせなきゃいけなくて。でも、それをやったところで起きてる子は起きているし。働いている側もそれで追い詰められる。こんな施設もあって、やったことはもちろん悪いけど、植松がここまでの事件を起こさないと、そういうことに目がいかないというのが事実としてあるんだろうなと思う。

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障害者は不幸しか生まない?

澤:多方面に議論が。その中で次の話に。1970年に起こった、母親による重度の脳性マヒ児の殺人事件。障害児二人を育てる母親が、二歳の女児をエプロンの紐でしめ殺した。当時のマスコミは母親の犯行を日本の福祉施設の不備故に起きた「悲劇」であると報じ、地元では母親への減刑嘆願運動が起こった。これに対して、神奈川県の脳性マヒ者の当事者会「神奈川青い芝の会」は、「障害者は殺されてもしょうがないのか⁉」と強い異議申立をした。ここ70年以降続いた障害者運動の原点。この事件から50年経って津久井やまゆり園事件が起こったということは、このお母さんとつながってるのかなと。50年間で何が変わっているのかなと。それはもちろん自分に対する問いでもある。僕は「自分の身内に障害者がいなかったので、」って話す時に「幸いにも」って言う。植松が障害者は不幸しか生まないっていう言い方と何が違うのか。
 一昨年にあった佐賀県の事件も小さな記事しか出なくて知られていないことなので報告したい。ネット上では、植松をキングと呼んだりヒーロー視する向きもあるけど、宮地小夜子被告(43)も植松に尊敬の念を抱いていたという。彼女は以前勤務していた障害者施設の施設長や利用者を殺害する目的で包丁などを準備し所持したとして、銃刀法違反(所持)と殺人予備の罪に問われた。僕は今回も犯人は福祉関係者かなと思ったら、手帳を持ってる知的障害者で利用者だった。さらにいえば、彼女はボーダー。動機を聞くと、「施設で働いているやつは何回も教えても覚えない。役に立たない障害者はいらないと思うようになった。」と。僕は裁判を傍聴して拘置所で面会もしたけど、植松もここまでストレートには語らなかった。実際に犯行している時にどう考えていた?と聞いたら「必死だったから覚えてない。」ってはぐらかされた。
大坂:この43歳の女性が知的障害を持ってるかどうかの話じゃなくて、世の中に普通あることで、ある人がいるためにチームとしてうまくいかないっていうのは、一般の企業の中でもそう。生産効率に対して効率の悪いものはダメだと、世の中そのものがそういう体質を持ってるんだろうと思う。
森住:最近youtubeでやまゆり園のことを見て、事件の時に通報のきっかけになったのが知的障害の結構重い方(家族会前会長尾野さんの息子さん)で、自分も刺されながらも職員に携帯を渡したと。そういうふうに、障害者はできないことばかりじゃないということをもうちょっと伝えて発信していかないとって思った。
日吉:障害者だけじゃなくて、健常者にも一人一人にも突きつけられている問題だし。優生思想にもつながっているっていう、考えれば考えるほど難しい問題だなって再確認した。

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