鳥は空に魚は水に人は社会に 2021.11.24 すいごごカフェ 伊藤時男さん(精神医療国賠訴訟原告)【後編】

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人生の転機は東日本大震災

 ある時、東日本大震災が起きた。私の故郷は震度7くらい。天井から配管が落ちて水が噴き出して、床が40センチくらい水浸しになった。病院で一夜明かした次の日には茨城交通のバスが迎えに来て、三春町の要田中学校の体育館に避難した。そこで食べたおにぎり(1個だけなんだけど)がうまかったことが忘れられない。そこから今度は茨城の友部病院で一泊してから、水戸市にある国立筑波総合病院に転院して2週間くらい。最後は茨城県石岡市の豊後荘病院に転院して、1年半くらい入院した。


退院して、グループホーム、そして一人暮らしへ…

 1年半経った頃、「君、群馬県太田市のグループホームに行く気はないか?」って言われて、初めて退院の話が出た。でも最初は「退院してもいいけど、免許証もないし取り柄もないし働けるかどうかわからないし」と拒んでたんだけど、双葉病院で知り合った織田淳太郎さんという福島で知り合った作家の人が「時雄さんだったら退院できるよ」って後押ししてくれて。ちょうどその頃、障害者年金と被災地の賠償金が入るようになったし、2泊3日でグループホームに試行外泊してみて「これならやっていける気がするな」と思い、退院の運びになった。

 その後グループホームに2年入居したんだけど、そこにいる人達はみんな覇気がないというか、一人でぶつぶつ言ったり幻聴がある人とかがいて、まるで病院と変わらなかった。それで俺はこれじゃだめだと思って、地域活動支援センターの職員に相談して、借家を探してもらって太田市熊野町の一軒家に移り住んだ。1人暮らしで5年くらい住んだんだけど、ぼろやになったので去年の8月からまた新たに引っ越した。
 太田市に来てから精神科の友達を助ける仕事があると聞いて、地域活動支援センターのスタッフに相談したらやったらどうかということで、ピアサポートの仕事を始めて今8年になる。病院訪問介護や、公園に行って話を聞いたりするなどの仕事をやっている。

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国家賠償請求裁判の原告になった経緯と思い

伊藤:熊野に入居して生活していた時、国家賠償研究会の方が訪ねて来て、「伊藤さん、裁判に出る気ないか?」って聞かれて一つ返事で「嫌!」って言った。でもそれから何か月か後、知り合いの織田さんが「俺は前に裁判やって負けたんだけど、時雄さんが裁判やってくんないか」ってしきりに頼んできたの。俺はやったって負けると思って不安で嫌だったんだけど、熱心に頼まれたもので、自分の意思で最後までやるってことを決めなきゃだめだと自分に言い聞かせ、それで裁判をやるようになった。
 裁判に出た動機は、福島の病院にはやっぱり私みたいに病院に入院していても、なんでもないような人がいっぱいいたから。状態が良くても退院できなくて40年、50年近くも入院していた人もいた。ある人は国道を歩いてたら、双葉病院のケースワーカーから「よう、俺んとこに来ないか」って言われて、のこのこついて行ったら、そのまま46年くらい入院させられたそう。そういう人が結構いるからね。長く入院してると施設症になって、退院できなくなって困っている人がものすごくいるってことを私は実感していたから、こういうことはあってはならないと、それで裁判に出る決意をした。

澤:身体、知的、精神障害とあるが、それぞれに社会的な差別・偏見があると思う。ただやはり精神障害者に対する差別は、精神病は一生治らないものだ、一般社会とは相容れないものだと烙印を押されてしまうってことですよね。だから裁判をしてるわけですよね。精神障害があっても一般人と融和して社会生活ができるんだってことを、どういうふうに訴えていけるんでしょうか。

伊藤:社会的入院の人は、もう何でもないんです。すぐ退院できる人達なんだけど、反対に社会的入院でない人は怠け癖がついちゃって病院の方がいいってなってしまうわけで。病院にいれば給食も出るし、それに頼り切っちゃって、自分から何かする意欲がなくなって退院する気持ちもなくなっちゃう。ところが社会的入院の人っていうのは、退院して働けるのに、「退院するにはお金が要るからそのまま病院にいてほしい」っていう家の人の考えもあるし、病院側は「家の人がいいって言えば退院させる」って言ってて噛み合わないんだよね。そういう人をなくすために何とかしないといけない。双葉病院にもそういう人が沢山いた。働いたら退院できると思ったのに、いくら働いても退院の話は出ない。この病院おかしいなと思ってた。

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