強制不妊 告知できぬ被害者 2022.1.12 すいごごカフェ 大坂冨男さん(埼玉障害者市民ネットワーク事務局)【前編】

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”出来損ないは排除しよう”が法律で許された50年間

 平成31年4月24日、「旧優生保護法一時金支給法」が成立した。これは、旧優生保護法により優生手術などを受けた方は一時金がもらえますよって法律。埼玉県では、県から認定を受けた支給法周知協力員(私も含む)または県職員が、障害のある方や関係者が総会、勉強会などにお伺いし、旧優生保護法一時金支給法について分かりやすく説明して周知しようと頑張っている。でも、現状ではほとんど手を挙げる人がいない。

 まず、優生保護法の話から。これは、優生上の見地から不良な子孫の出生防止をするとともに、母性の生命健康保護をすることを目的とした議員立法。1948年(昭和23年)から1996年(平成8年)の50年弱存在した。本人の同意なく、医者や裁判官が「この人には子供が生まれちゃ困る」と決めたら強制不妊手術ができた。出来損ないがのさばると、良い方の人達が食いつぶされて逆淘汰されちゃうから、出来損ないは排除して優秀な人達を守ろうという考え方が優生思想に結びついてる。私が子供の頃は学校でもこの優生思想を教えられた。

 不良な子孫を残さないために優生手術を受けなければならないとされる病名がいっぱい書いてある資料を見ていただきたい。遺伝病じゃなくて感染病とかの病気も含まれているけど、医師会は文句も言わずに、それに乗っ取ってどんどん不妊手術をやった。強制というところがミソで、医師がこの人おかしいよと申請して、都道府県にある優生保護審査会で審査が通ると手術が実施されていた。審査会は、医師や民生委員、裁判官とか法曹関係などから知事が任命していて、医師が提出した手術申請書や健康診断書、遺伝調査書をもとに審査会で判断していた。手術ができる “優生保護法指定”と大きく書いてある病院もたくさんあった。埼玉県でも昭和43年(1968年)まで資料が残ってる。全国では1981年まで資料がある。ということは、そこまでやってたということ。

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高齢の被害者に情報がどこまで届くか

 320万の一時金がもらえるならみんな申請したらいいじゃないと思うんだけど、一時金支給法が発表になってから相談に来た人の数は123件で、そのうち請求を受付けたのが20件。認定したのは資料では15件。昨日聞いたら16件で1人増えてたけど、極めて少ない。被害者側の団体は、一時金が少なすぎるし、手続きが複雑すぎる。それに謝られてない、と訴えている。何より、問題は年齢。埼玉県内で判明している優生手術をされた方の平均年齢は93.9歳。内訳は60歳代1名、70歳代10名、80歳代105名、90歳代182名、100歳以上77名。相当なご年配になっていて、生きてる間にこの情報を聞ける人が少ないということ。不妊手術をしていたことを家族にばれるのは嫌だし、あと少し生きればいいだけだから静かに余生を過ごさせてくれよって思う人もいると思う。でも、皆さんもこういう話があるんだってってことを情報として知らせていただきたい。


根拠なく進められた強制不妊手術

 優生手術については正確な情報が少ないんだけど、手術件数を増やすために騙されて病院に連れていかれるケースがかなりあったと言われている。貧乏で学校に行けずに字が書けない人とかも連れて行かれたらしい。今も裁判をやっている北三郎(仮名)さんという方は遺伝病でも知的でもなんでもなかったんだけど、14歳の頃、素行が悪く不良ぽかったというだけで手術をされたそう。(2022年3月11日の2審で逆転勝訴。東京高等裁裁判所の平田豊裁判長は「旧優生保護法は立法目的が差別的思想に基づくもので、正当性を欠き、極めて非人道的で憲法に違反する」とし、そのうえで、人権を侵害する不妊手術を積極的に実施させていた国には賠償責任があるとして、1審とは逆に北さんの訴えを認め、1500万円の賠償を命じた)

 優生保護法ができる3年前の1945年は、日本が戦争に敗れた年。食糧も家も不足している中で、国としては生まれる子供の数を減らしたかった。その前は、働き手や戦争に行く兵士になる子供がたくさんほしかったので、「産めよ、増やせよ」ということで、「堕胎罪」で中絶を禁止して、不妊手術も避妊も厳しく規制していた。無理をして出産を繰り返して身体を壊した女性もいた中、「優生保護法」では母性の健康保護として、産まないこともできるようにして子供の数を減らそうとした。でも、今から70年前をどうこう言ってもしょうがないけど、人口政策だったといっても、これに優生思想が加わったので、お上が率先して「差別」を植え付けることをやってきたんだなと思う。

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後編へ続く→https://room-yellow.seesaa.net/article/202206article_5.html

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