未確認当惑物体の現在 2022.4.6 すいごごカフェ 橋本克己さん(「克己絵日記」作者)【前編】
なぜかはわからないけど、続く災難の日々
橋本:橋本克己です。住所は越谷市~(番地の最後まで)です。歳は63。(大坂さん、山下さんなどが手話を通訳)
山下:橋本君は目が見えないのと、耳が聞こえない。学校に通ってなかったから喋れない。でも、二十歳の時から手話を覚えて街に出るようになって、コミュニケーションするようになった。通じないからいろいろなことがあった。克己君が1人で車椅子で走っていた時に後ろから車がどーんとぶつかって、
橋本:Nさんという人が後ろからぶつかって、谷中耳鼻科で夜に山下さんがNさんといろいろ話をして、
山下:手こぎの三輪自転車のような車椅子なので案外安定してるんだけど、乗用車に激突されて、車椅子から空中を飛んで3mくらい前の方に落っこちたこともあった。視野が狭いし耳が聴こえないから、いくらクラクションを鳴らされてもわからない。自分の後ろに車が連なってると思ってなくてニコニコしているから、わざと交通妨害してるように思われてしまう。怒り心頭に達したトラックの運転手が降りてきて回し蹴りされたこともある。夜車椅子をこいでると、どっかの施設から脱走してきて迷子になってると思われて、「保護してあげました」、と警察に連れてかれたこともあった。階段から転落したり、毎晩どこかで事故を起こすから、私たちは家族から「迎えに行ってくれ」と電話がかかってきて、幸手とか足立区まで行くなんてことがしょっちゅうあった。
今はしびんを持ってるけど当時はなかったから、物陰でおしっこしてると、そこの家の人から「何やってんだ」ととがめられて、犬をけしかけられたこともある。でも本人は何言われてるかわからないから「なぜこういう事態になるかわからないけど、とにかく災難に遭った」と。また別の日には、お地蔵さんがいっぱいいる所に風車もあったから、1個取って車椅子のところにつけて行こうとしたら、怒られたり。
警察では有名人になってる。だけど話が通じないわけ。だから、自分で描いた絵を我々のところに持ってきて、一緒に行ってくれと自分から通訳を求めてきた。そんな風にして描いてきた絵が克己絵日記。困ってる内容が多いんだけど、意外と面白いんだよね。そしたら、こういうことを描いたらみんなが喜ぶな、結構受けるんだな、じゃあ今度は何描いてやろうって、だんだん工夫をしてきた。
自分だけの世界から出てみたら…
山下:橋本君は今もトミカを買うんだけど、当時も集めてて。家に閉じこもってた時はちょっと目が見えたから、毎日トミカをきちっと並べて、虫眼鏡で見て触って、ちょっとでも傷があるとそれはもうダメだから新しいのを買ってこいと親にせがんでた。当時は外に出たことがないし、手話も知らなくてコミュニケーション方法がなかったから、周りの人にとっては小さいことなんだけど、本人はすぐイライラしていた。トミカの車が1つ傷がつくと、じゃあ明日買ってきてやるよ、で済まない。本人にとっては、そこだけが自分の世界だからね。だから、ちょっとしたことでも親がやってくれないとすぐ暴れ出していた。
橋本:橋本家で、お母さんともケンカ、お父さんともケンカ。橋本君は小さい時、ケンカしました。お父さんと殴り合いで。包丁を持ってきて。
山下:それでナイフとか包丁は取り上げられて、お父さんは怒って棒で殴ってくると。すると本人は車椅子で玄関に突入して玄関のガラス戸を全部割っちゃうと。そういうようなことを街に出始めの頃までやってたけど、だんだん世界が広がってくにしたがって少なくなっていった。
橋本:野沢さん車椅子、克己君と2人で、橋本君は一緒に並んで北越谷
山下:野沢さんはもう亡くなったんだけど、脳性マヒでわらじの会の前代表。野沢さんは地元の小中学校を卒業して昔から外に出てたから、街を案内してくれたと。そこから、一人で車椅子で外に出るようになった。
橋本:車椅子で街へ一日中あちこち行って、120円で自動販売機でどれがいいかなって、アイスコーヒーを
山下:街に出始めて一番最初にお金を使ったのは、自動販売機。お金を入れれば出てくると学んで、あちこちの自販機を総なめして、ここにはこういう自販機があるって脳内地図を作っていった。
後編→https://room-yellow.seesaa.net/article/492144912.html
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