熊たちの住む森を次世代に 2022.4.20 すいごごカフェ 竹花弘美さん(日本熊森協会埼玉支部)
熊と人間、お互いのために棲み分けを
ある時イオンで開かれたある講座に行ったら、「山を買いたいんだけどどうしたらいいか」って聞いていた人がいて衝撃を受けた。その人が熊森協会の人で、山を大事にしたいから山を買いたいっていうのにすごく心打たれた。で、すぐ熊森協会に入って、勉強を始めた。熊森協会は熊の保護もしてるけど、自然の保護をするために、公益財団法人をもって山を買い「森再生活動」を行い、熊と人が棲み分けできる環境を次世代に残す活動をしている。日本熊森協会は公の支援を受けていない民間団体だから、いろんなことができる。
熊は今、大木が切られて洞(うろ)がなくなったから、冬眠する所やエサ場がない。それで里で生きていこうとするから出てきちゃう。熊は今年間6000頭殺されていて、ほとんどは4歳くらいの子熊。そんなに殺されたら、いずれ熊は滅びてしまう。だからそうならないうちに、皆さんに気づいてもらいたいと思ってる。
日本の熊は2種類。ツキノワグマとヒグマ。ばったり行き合ったら、熊は人間が怖くて襲ってくる。するとやっぱり力が強いから人間は負けてしまう。で、後からその熊を殺しに行くわけ。あるいは罠を仕掛ける。本来なら罠にかかった熊は麻酔銃で眠らせて放獣(奥山に離す)しなきゃいけない決まりがあるんだけど、それをできる日本人は何人もいない。だから熊は弱って死んじゃうか、猟友会の人が殺してしまうわけ。
江戸時代では、日本人は熊を見たことがなかった。人間は下の方、熊は上の方に住んでいて遭遇することがなかったし、日本人に登山なんて趣味がなかったから事故もなかった。でも人間が奧山まで入って杉の木を植えるようになった。すると人工林となって、熊が食べるどんぐり等がなくなって、里まで下りてくるようになったので遭遇する機会が増えた。じゃあどうすればいいかというと、棲み分け。私達が一生懸命考えてる、奧山を広葉樹の森に戻すということ。そうすれば熊と遭遇することもなくなるんじゃないかと思ってる。
水のサイクルが自然を潤している
富士山は、火山でできている山。太古の昔、溶岩がものすごく大きな木をなぎ倒して三島まで流れてきた。その木が溶岩の中でたまって燃えると、大きな洞窟ができた。木のトンネルが風穴になるの。そこに行くと夏でもひんやりして寒い。上からポタポタ垂れてくる水が凍って、氷筍ができる。これも形を変えた、涵養水(地表の水が地下に浸み込んで地下水になること)。徐々に溶けて最終的に海に行くわけだけど、水は変化しながら地下に蓄えられてる。こういう水の働きによって私達は飲み水を得られているわけで、むやみやたらにいろんなものを壊して涵養水を損なうようなことがあったら、やがて水不足になりかねない。
なんで漁師が木を植えるか。木を植えることによって森が豊かになる。豊かになった森から流れてきた水は栄養が豊富なの。で、海が豊かになるとたくさんの魚が獲れるようになる。水のサイクルによって恵みはもたらされる。
種子法も改正されて、原発だってあっという間にいっぱいできた。国は安全だと言って誰も反対しなかった。びっくりしちゃった。私の考えだけど、原発に代わるエネルギーが要る。私達はやっぱりクーラーとエアコンが必要。だからどうやってエネルギーを得るか。そのために火力でも水力でも小型の発電。地熱発電が今のところ一番持続可能と言われている。そんなふうに変えていかないといけないけど、国がやらないから。
素晴らしい日本の自然を残していきたい
私はこんなことを考えるようになって10年も経ってないの。勉強したのは熊森に入ってから。そしたらいろんなことがわかってき始めて、恐ろしくなる。でもそんなことは言ってられないんで、一人ひとりに1対1で話さないとだめ。本当に小さなことなんだけど、私はそれしかできない。私の家は高知県の田舎にあって、後ろは山、前は海ってところに育った。裏山で野いちごや山菜をとって食べる、海で貝やカキを獲って食べる、そういう遊びの中で覚えた自然が私にとって一番の宝だったの。でも、娘時代は自分がどんなに貴重なところに住んでるか気がつかなかった。埼玉に来てみたら、広い平地を見たことがなかったから、素晴らしいところだと思ったしね。でもそのうちに山が恋しくなって、それで私は山が好きだってわかった。富士山も6回登った。面白かった。ピースボートに乗って世界を見てきたことでも、日本の素晴らしさがわかったの。だから、そんな日本をちゃんと子供に残していきたいと思う。それで一生懸命なんです。
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