大事ですヒヤリハット 2022.11.30 すいごごカフェ 齊藤一枝さん(独立ケアマネ)
みんなどこかで体験してきたかも…幸い災害に至らなかった小さな事象
ヒヤリハットって聞いたことありますか?「事故に至る可能性があった出来事の発見」だそう。厚労省の兵庫県の労働局では、「危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事象のこと」と定義している。つまり、怪我をするとかショックを受けるとか、そういうことまで行く前のことなのかなと思う。
ヒヤリハットとは、ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒさんという損害保険会社に勤めてたアメリカの方が考えたもの。ある工場で発生した数千人の労災を統計学的に調査をして、それを1931年に本にして出版されたことでハインリッヒの法則と呼ばれるようになったそう。実際分析した結果、1件の重大事故の裏には29件の軽い事故と、災害に至らない小さな事故、俗に言うヒヤリ・ハットする事例が300件あったそうだ。
最近では介護現場でも多いヒヤリハット事例
ヒヤリハットやアクシデントは実際どこで起こっているか。医療の現場だと事細かくあるんだけど、最近だと介護現場でも多い。厚労省的には、工事現場やいろんな職場で起きるということなんだけど、事故内容のトップは転倒と転落。しかも自宅が一番多い。先日は私の利用者さんの旦那さんが、介護の認定受けてない人だけど、草取りの途中で転倒して亡くなったという連絡が来た。そのくらい身近で、ごくごく起きやすい。
介護現場での発生要因の具体例としては、手すりがないところで転倒した、装具が合わなくて怪我をしてしまった、など。あとは、介護用のベッドでギャッジアップといって背もたれと足のところを上げたり下げたりする時。病院とか介護施設にあるベッドは必ず柵ができてて、本当はそれにつかまって寝返りとかを助けてくれるものだけど、柵に手をかけながらリモコン操作をして骨折する事故が結構上がったらしい。認知症の方は理解ができないので、リモコンそのものを届かないところに置いちゃうとかの対策をしていることが多い。
他の人の薬を飲ませそうになったというのは、施設でも病院でもある。私がグループホームに勤めてる時に、同僚が薬を持ってきて「Aさんですね?」って確認したら「はい」って返事をしたから飲ませたんだけど、それはBさんだった。パーキンソン病の薬を違う人にあげちゃったから、もうえらいことで。命に別状はなかったけれども、3日くらい昏睡状態だった。本人の理解力がないとそういうことにもなり得る。
予測が大事。そして、起きてしまったら必ず報告を
あとよく聞くのは電気コード。段差って意識しないじゃない?でも、それでつまずく。階段はしっかり高さがあって、自分の脳が段差だとしっかり認めるから、意外と階段でつまずくことは滅多にない。昔の作りのおうちだと、和室の入り口は確か3cmくらい上がっていて、そこにけつまずく人は結構いるけど今はだいぶフラットになってる。実際転んでる方が多いので、住宅改修ではできるだけお風呂場の段差を直したり、手すりをつけたらどうかということをお伝えしている。ただ、必ずしも段差がない生活がいいわけではない。単に手すりとかエレベーターをつけるとかじゃなくて、例えば散歩や体操をさせるとか、筋力が落ちない工夫、本人の自立度が下がらない工夫をしてるところもいっぱいある。
私が夜勤の時に、同僚が利用者さんをトイレに座らせてそのまま忘れて帰っちゃったということがあった。2時間くらいは座りっぱなしだったのかな。落ちなかったからよかったけど。でも、その方は別の施設に移ったんだけど、同じことされちゃって倒れて亡くなっちゃった。身体が身動き取れなくなっちゃった方にとっては介助してくれる人が命綱みたいなもの。ましてや認知症になったら思うように伝えられなかったりとかするし。そういう場合は、トイレに入ってますということを周りにも伝えるとか、一番はやっぱり離れないこと。
予測が大事なのかなと思う。それに、危ないことがあったら必ず誰かに伝えることがヒヤリハットでは大切。特に施設系では大事。誰かにはまず報告する必要があるので、ヒヤリハット報告書は第一発見者とかやっちゃった人が書くことが割と多いけど、いつどこで誰がということと、対象者と発見者は誰か、対応していた人は誰なのか、発生原因と対策などを事細かく書く。そして報告書だけでは終わらせず、毎月そういう課題として上げて検討会議みたいなものを開く必要があると思う。
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