障害者雇用代行業について 2023.4.12 すいごごカフェ 大塚眞盛さん(元特別支援学級・学校教員)【前編】

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障害者雇用促進法における法定雇用率

 今日は、エスプールなどの人材派遣会社が障害者雇用の代行をしているという話をする。これに関連する障害者雇用促進法などの資料を再度調べて考えてみたが、ある意味健常者と障害者の生き方の問題になると思った。単なる雇用問題だけで済まされない問題。結論はないが、皆さんの意見を聞きたいと思う。

 障害者雇用促進法の第1条には、「この法律は障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会(均等というのは障害者も障害者でない人も互いに平等で差がないとうこと。全く対等に就労する機会がなければいけないということ)、及び待遇の確保(給料など待遇も均等でなければいけないこと)並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置-職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じて-その職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、以て障害者の職業の安定を図ることを目的とする。」ということが書いてある。

 それに加えて、法定雇用率は今、法が改定されて2.3%。例えば会社が100人会社の中に人を雇ってるとしたら3人は障害者を雇わなければならないということ。10人の会社なら0.23人だから障害者を雇わなくていい。計算していくと44人くらいいる会社には必ず1人は障害者を雇わなくてはいけない。


法定雇用率を満たすためだけに障害者は会社の外へ?

 上記のことをふまえて、障害者雇用代行ビジネスについて簡単に説明をする。障害者雇用代行業者は人材派遣会社なので企業と労働者(障害者)を結びつける役割をしているのだが、その障害者雇用代行業者自身が農園を運営しており、企業が障害者雇用代行業と契約するとその農園で障害者を働かせるという仕組みを取っている。雇用代行業者は農園の使用料と障害者の紹介料を企業から取って儲けているということ。各企業は、障害者雇用促進法で決まっている法定雇用率を満たすために、雇用代行業者に外注して、農園で障害者を働かせているわけ。

 資料「S社は2011年に千葉県内で企業に向け貸し農園を始め、現在は千葉・愛知・埼玉の3県で約20の農園を運営する。利用企業は約250社に上り、その中には著名な大手企業も少なくない。農園ではS社が各企業に紹介した障害者、計約1400人が作業に従事する。就労が開始後、定着率は92%ということで非常に高い。」ここに書いてあるのは2019年度のことだから約4年前。だから雇用代行業者はまだどんどん増え続けている。

 雇用代行ビジネスの体質・本質がわかるのは、育てた野菜に市場価値を求めないということ。本来だったら、何かを作り出して、売って儲けたものが給料として出てくるのが普通の労働というか仕事だと思うんだけど、雇用代行業者は利益が必要じゃないから売らない。それでも給料は高い。仕事はそんなにやらなくても、市場価値を求めて売らなくても、3年前は11万円で、今はさらに増えて13万もらえるそう。それは定着率が高い理由の1つだろう。


「共生」と「分断」のどちらに入ると思いますか

 なぜ企業は雇用代行業者に頼るのかというと、毎日新聞記者の山田奈緒さんのレポートの中にキーワードがある。山田さんは家族に障害を持っている方いるということで、障害者問題についてすごく造詣が深い方。「理解力が低かったり、環境変化に過敏だったりする知的障害者や精神障害者の受け入れを身体障害者に比べて倦厭する企業は多い。企業からは知的障害者は何ができるかが想像できない。そして、障害者を雇いたくない一番大きな理由は、支援に労力がかかり生産性が下がるということ。」すごいことが書いてある。私もいろんな企業を回ったけど、これが本音ではないかなと思っている。

 ただ、こういう会社だけではない。例えばサイゼリヤは積極的に障害者を雇っている。障害者を雇うことで社会的な使命を果たすことができるし、職場に活気が出ると言っている。サイゼリヤの役員の話を聞いた時には、「障害者が定着しないというなら、それは他の社員を教育しない店長が悪いし、会社の責任だ」と言っていた。障害を持ってる人達に円滑に働いてもらうために指導員をつけたり、そうした労力を割いている会社もある。

 普通使われる「共生」というのは、障害がない人もある人も共に生きることをいう。「分断」というのは、極端に言うと障害を持った人とない人と別々に行動するということ。この件は共生と分断のどちらに入ると思いますか。

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【後編】https://room-yellow.seesaa.net/article/502390030.html

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