野島さんとデート 2024.10.30すいごごカフェ 樋上秀さん(誰もがくらしやすいまちづくり実行委員会代表)

IMG_0771.JPG
 「交通アクセス」ということで、本来バリアフリーがここまで進んできて、行かれる所から行きたい所へということで、理想のアクセスになってきた。昔はバリアだらけの所を、今いる野島久美子さんとアクセスしていったわけですけど。

 この話をするきっかけになったのが、先月のすいごごで、市民ネットワークの清水泉さんが野島さんの話をしたこと。野島さんが高齢化を迎えて大変な思いをしていることを涙ながらに語ったことが印象に残った。

野島さんと横浜アリーナへ
 樋上は昔野島さんと、お互い若かったということもあって、横浜にコンサートを見に行った。オープンしたての横浜アリーナに。樋上はそれまで何とか歩いていたんですが、電動車いすを利用するようになって間近の頃だった。その頃は携帯、スマートフォンなんかはなくて。多分ポケベルの時代。野島さんは携帯電話を持っていなかった。

 当時、エレベーターはほとんど駅に設置されていなくて、東武線も、草加の駅とかくらいにしかなかった時代。エスカレーターもついていない駅がほとんど。周りの人に頼んで、トイレとか食事を無理やり手伝ってもらったりした。その頃、コンサートはそこまで観に行ったことがなくて、野島さんが聴きたいということで行ったんですけど、ほとんど曲のことは覚えてなくて。
IMG_0769.JPG
 9時くらいに終わって、余韻に浸っている野島さんとお茶を飲んでいたんですけど。野島さんは泊り介護で、12時までに家に帰らないと介護者が中に入れない、ということで、それを聞いてシンデレラみたいだと思いました。野島さんにスイッチが入って、「先に帰る」って。

 新横浜の駅は新幹線のJR駅でそんなに駅員がいなくて。若い駅員に行き先を告げたんですが、野島さんがもういいって言って、駅員を振り切って周りの人に声をかけて担いでもらって行くことに。駅員が係の人を呼んでくるので待っててくださいと言ったんですけど、野島さんは周りの乗客を捕まえて階段を上がっていった。

 それを見た若い駅員は、帽子を地面にたたきつけて、ばかやろうって叫んだんです。それを見た樋上は、野島さんに対して怒っているのかなと思った。でもそうではなくて、自分自身に腹を立てていた。野島さんにサービスしようと思ったのに、それが都合でやれなくて、さっさと行ってしまったっていうのを目の当たりにして、すごい悔しがってた。僕はそれを見てテレビのドラマを見ているような錯覚に。
IMG_0767.JPG
 野島さんもどんどん先に行っちゃうから樋上も追っかけなきゃいけないと、駅員のことも心配だったんですけど、周りの人を捕まえて担いでもらって。1,2本遅れたんですけど、上野の駅で野島さんに追いついて。野島さんはもう逆にスイッチが切れていて、もう間に合わなきゃ間に合わないでいいっていう。その後は野島さんをせんげん台駅まで送って行きました。12時は回っていたかもしれないけど、無事野島さんの家までたどり着いた。とにかく、アクセスの鬼。

 そういう時代だったのが、多分30年位前。それからいろんな時代を経て、エレベーターやいろいろなバリアフリー、介護者もつくようになり、変わっていってはいる。今は昔みたいに、大変な思いをしなくても済むようになったわけですが、でも昔みたいに無理やり横浜まで、そこまでして行きたいっていう情熱は多分樋上も野島さんももうなくなったかな、と思う。

野島:コンサートは行きたいよ。どこでも。
樋上:だから上に書いてあるみたいに権利か? わがままか? っていうところで。
野島:でもそれはわがままじゃないと思うよ。エレベーターがあろうとなかろうと、行きたいものは行きたいんだよ。

 2番目に橋本克己さん。「アクセスの 先駆者 革命児 ドンキホーテ」。昔エスカレーターもエレベーターもない時は階段の前で人を捕まえるわけですけど、克己君は全く声掛けはしないで黙っている。それでも人が群がってきて。まるで波に攫われるように人ごみの中に消えていく。アクセスの革命というか面白さというか。だから僕にしてみると克己君は先駆者。ただ、そういう達人たちも年を取って、大変なことが多くなった。
 「生粋の障害者はいても、生粋の高齢者はいない」について。やっぱりみんな、健常者障害者みんな高齢者になっていく。っていうことで、一億総障害者社会から一億総高齢者時代へなっていく。また野島さんとのデートがやれるのかって思ってます。
IMG_0768.JPG
野島さんからの話
 野島: あの時はすでに前もって鍵を渡しといてあったけど、連絡もできずいつ帰るかわからなかった。せんげん台着いたのは12時過ぎていた。学生だったからなんも言わなかったけど、今じゃうるさいじゃない。

 山下:さっき樋上君が言ったことで、「追いついたら野島さんのスイッチが切れてた」とか。

 野島:それは、介助者もうちにいるからまぁいいかなと思った。コンサートって出るときに時間かかるんだよ人がいっぱいで。そうすると早く帰らなきゃと焦るわけ。シンデレラになっちゃった。

 樋上:だから樋上が一番面白いのは、野島さんが乗り込んで、駅員が悔しがってばかやろうって叫ぶ、あと周りの人も野島さんに急かされて、巻き込まれていって。樋上からするとすごいドラマチックな展開。聴きに行った歌より、やっぱりすごい印象に残った。それはすごい大変な思いを、周りもすごい大変な思いをしていると思うんだけど。でも野島さんについて行ってしまう。通りすがりのドラマチックな関係もすごく大切。

この記事へのコメント